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私は大学時代で子ども全般について学び、現在子どもにかかわる仕事をしているのですが、そうした中で実感したのが、「子育てや保育の現場で、音楽というものがとても大切な役割をはたしている」ということでした。
もちろん最初から「音楽」というものを明確に意識していたわけではありません。ただ自分が子どもと話をする時に音楽的な抑揚をつけて言葉かけをしたり、お昼寝の時に当然のごとく子守歌を歌ったりしているということを通して、「保育の際に音楽というのは重要なポイントなのかもしれないな」、ということをなんとなくは感じていました。
それがはっきりしたのは、一人目の子どもが保育園で覚えてきた手遊びを、やってみせてくれた時でした。まだ1歳の子どもが、「メメでしゅー」「ハナでしゅー」と、本当に得意気にやってみせてくれる。この時「ああ、子どもって本当に音楽的なことが大好きなんだな」とはっきりわかり、これをきっかけに自分で手遊び歌を作ったり、保育の場に音楽を積極的に持ち込むということをはじめたのです。
では具体的には、音楽を使って子どもとコミュニケーションすることに、どのような効果があるのでしょうか。
たとえば子どもといっしょに遊んでいる時、元気な音楽がかかるとふだんはおとなしい子がすごくノッて踊りだしたり、朝お母さんとケンカしてきてしょんぼりしている子が好きな曲を歌っているうちにだんだん元気になってきたり、逆にクラスがワーッと騒いでいて「ちょっと落ち着いてほしいな」という時に、そういう雰囲気の曲を弾いてあげるとすーっと静かになったり、ということがよくあります。また、絵本や紙芝居を読んであげる時でも、ただ「ゾウさんがきたよ」と読むよりも、♪ゾウさんがきたよ〜♪と、低い声で表情をつけて音楽的に読んであげるほうが、ずっと反応がいい。
つまり、音楽というのは子どもの心に直接作用し、イメージを大きくふくらませるんですね。子どもは、想像力や観察力、表現力、運動能力など、さまざまな能力を持っていますが、音楽というのはそういう能力の交差点にあって、発達の手助けをしているのではないかと思います。典型的な例が「聴く」ということ。私たちの生活はいろいろな音に満ちていますが、小さいうちに音楽に接することによって、じっと耳を澄ませて「この音、何だろう?」と感じる習慣がついてくると思うのです。「聞く」のではなく「聴く」力が身についてくるんですね。現代の日本では、音楽が当たり前のようにある家庭というのが、まだ少ないような気がします。たしかにテレビやラジオ、ビデオ、CDなどの普及によって、一般の人が音楽を耳にする機会は増えていますが、そのもう一つ先にある「この音楽を子どもにきかせてみよう」「この歌をいっしょに歌ってみよう」という積極的な姿勢は、まだまだなのではないでしょうか。
コミュニケーションとは、言い換えれば「共感体験」です。そして音楽とは、その共感体験をもっとも得やすいツールだと、私は思います 。(談)
和洋女子大学人文学部発達科学科教授 博士(医学)
略歴
東京生まれ、お茶の水女子大学大学院 家政学研究科児童学専攻修了。現在、和洋女子大学人文学部発達科学科教授。日本音楽著作権協会正会員、日本保育協会研修部企画委員。3児の母。母子を脅さない育児・保育をモットーとし、幼稚園・保育園の研修、保護者会などでの講演を積極的におこなっている。
主な著書
0〜3歳の育児(西東社)歌ってあそぼうジャブパッパ(偕成社)ふれあい歌遊び12ヶ月(学研)リズムでるるるん(チャイルド)他